溺愛プリンス
さっきまで賑やかだった廊下も、人はまばらだった。
ベルト王が、広間に現れるからだろうか。
胸がドキドキする。
ショーンさんはゆっくりとした足取りで先を行く。
まっすぐに伸びたその背中を眺めていて、ふと思った。
そういえば……。
「あの、ショーンさん」
「なにか」
少しだけ駆け寄ったあたしに、すぐに抑揚のない声が返ってきた。
「ショーンさんって、ハルの執事……さんですよね?あたしと一緒にいてもいいんですか?」
日本まであたしを迎えに来てくれたり。
少しだけど、ファブリック家にも一緒にいてくれた。
ハルの専属なら、ハルのそばにいるのが普通なんだよね?
「……ベストリアさまからの申し付けられておりますので。志穂さまがこちらにいる間は、お傍に居るように、と」
「……そうなんですか……」
ベスが……。
そうだよね、ハルはあたしがこっちに来てる事は知らなかったわけだし。
ハルが言ったわけじゃないんだよね。
……なんだろう。
胸が、ザワザワする。
不安で今にも逃げ出してしまいそうだ。
キャンドルライトに照らされた長い回廊を進む。
優雅なクラシックが、まるで夢の中へいざなっているような感覚を覚えた。