溺愛プリンス
台所には、すでにいい香りが漂っていた。
テーブルの上にはどっさりのソーセージや果物。
オーブンには火が入っていて、その中でこんがりとパンが焼き上がっていた。
わぁ……ここに入るの初めて……。
キョロキョロト辺りを見渡していると、目の前に瑞々しい林檎が差し出された。
「どうぞ」
見上げると、クロードさんがいて。
キレイな微笑みを湛えている。
そのアクアマリンの瞳の中に、ポカンとしたままの自分がいて。
なんだかいたたまれなくて、手元の林檎に視線を落とす。
「あ、ありがとうございます」
慌ててそれを受け取る。
真っ赤に熟れた林檎。
手にしただけで、甘い蜜の香りに包まれた。
思わず鼻に近づけたあたしに、クロードさんは静かに言った。
「志穂さまは、選択されたんですね」
え?