溺愛プリンス
そう願いながら
まるで引き寄せられるように近づく距離。
震える唇に、陽だまりのような優しいキスが落ちた。
「、ハル……」
キスの合間にそっと名前を呼べば、鮮やかに紅葉した真っ赤な色の中でハルの濡れた瞳があたしを見下ろした。
「ハルって、俺様でわがままで、いつも強引でほんとにムカつく」
「……なにそれ、悪口?」
瑠璃色の双眼が呆れたようにグッと細められる。
吐息もかかる距離で、ハルに睨まれてしまう。
でも、あたしはその視線を真っ直ぐに受け止めて続けた。
「平凡だったあたしの世界が180℃変わっちゃって、戸惑った。
だけど、あたしもいつもまにかハルの口癖に心地よさ覚えちゃって……」
「口癖?」
「うん。ほら、いつも”してやる”って、そう言ってくれたでしょ?俺様で強引だけど、いつもあたしに聞いてくれてたのよ、どうして欲しいんだって……」
「……お前、そんなのが嬉しいのか? 悪趣味だな」
首を傾げるハルがおかしくて、ふふっと笑うとハルは照れくさそうに視線を逸らした。
「そう。あたし、悪趣味なの。だって、ハルを好きになっちゃったんだもん」
伝えたかった想い。
やっと、胸を張って言える。
満面の笑顔を向けると、ハルの瞳が大きく見開かれた。
そして、すぐに目のふちを赤く染める。
「ハルが欲しい。……あたしにくれる?」
そう言うと、両手で頬を包まれて、柔らかな前髪が額に触れた。
くすぐったくて目を細めると、ハルが喉の奥でクッと笑うのがわかる。
「あたりまえだ。
―――その言葉を、どれだけ俺が待ってたと思ってるんだ」
甘いキスに身体が震える。
ポプラの木に隠れるように、ハルはあたしを腕の中へ閉じ込めた。