溺愛プリンス
◇
ハルに手を引かれ、2階のいちばん奥の部屋に連れて来られた。
淡い若草色の壁紙に、白い家具で統一された優しい雰囲気。
ファブリックお屋敷の豪華な調度品はなにもない。
出窓には薄いレースのカーテンが引かれていて、外からの日差しが柔らかく降り注いでいる。
素敵なお部屋……。
「ここは…………っ」
突然後ろから抱きすくめられ、ビクリと固まってしまう。
「――俺の部屋だ」
「そ、そうなんですね!す、すごく可愛いお部屋で、なんて言うか……」
ハルは可笑しそうに喉の奥で笑うと、低く耳元で囁いた。
「似合わない?」
「ッ、」
別に何をされたわけじゃない。
それなのに、思わず息を詰まらせた。
ハルはそんなあたしを知ってか知らずか、さらに腕の力を込める。
首筋に感じる息遣い。
頬にかかる柔らかな髪の感触。
ハルの……、体温
ああもう、心臓がドキドキして……爆発しそう。