溺愛プリンス


「そう怒るな。 ますます色気がなくなるぞ」

「……なっ! なによもう!そう思うならこんなことしないでっ」



どうやら、本当に怒ったらしい。
頬を真っ赤にしてツンと顔を背けた志穂はそのまま上半身を起して、ベッドから抜け出そうとする。

俺はすかさずそれを制して、腕を掴んだ。



「どこへ行く」

「ど、どこって、もう起きなきゃ。 だって今日は……」



薄い寝着の上に、カーディガンを羽織りながらそう言った志穂。



「…………」



志穂のスケジュールは、俺と同じくらい過密だ。
ローズベルト家にふさわしい花嫁にするとかなんとか、そういやクロード張り切ってたな。


正直、今のままの志穂でいてもらいたいんだけど。
結婚すると決まった以上、仕方ないか。

俺の為に頑張ってくれてる志穂を愛おしいと思うのも、また本音だ。

華奢な志穂の背中を眺めながらそう思った。




…………けど。






「 志穂 」




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