God of Death

『……お取り込み中悪いが、アイト、仕事だ』
　突然の低い声に、アイトはびくっと肩を震わせた。そしてすぐに、給水タンクの下に置いてある鈍色の鎌に目をやった。

　全体的に赤っぽく、柄と刃の部分を繋ぐ金属で出来た部分に、大きな瞳が一つだけ付けられた悪趣味なデザインの鎌。こいつは、言葉を話す。
　鎌の瞳はぎょろりとアイトの方に向けられている。端から見れば恐ろしい光景だが、アイトには、鎌が申し訳無さそうな表情をしているということが、すぐに分かった。

　鎌を見つめるアイトに気付いたメグミが、アイトに尋ねる。
「え、なに？　仕事？」
「ああ、そうみたいだ」
　アイトが持つ鎌の声は、アイト以外の誰にも聞こえない。人間には勿論、他の死神達にも、死の王にも。
　これは、他の死神の鎌だって同じだ。アイトは、自分以外の鎌の声を聞いたことが無い。デザインはどの鎌も一緒だが、声が違うのかどうかは、きっと一生知ることは無いだろう。