青春はこれからだ!!
小沢のマンション―

「小沢…」




「っ……ふみちゃ…ん」




震える声が
狭い部屋中に響き渡る




「小沢っ・・」



「なんで…こんなっ」




小沢の体が硬直する
そして今にも泣きそうな顔で俺を睨み付けた
俺はそんな小沢にも動じず、ソレをやりつづける
そう、演劇を





「はーいかっとぉー」

いちいち大きいアホっぽい声が耳に響く

「あのね、前回があれだったからって真面目にやってるの?」

松村先生が口を尖らせる
眼鏡が半分曇りぎみだ
頼りなさは
小沢みたいだな…なんて思ったりもする

「小沢君は素人にしてはうまかったよ!!
裏切られた悲劇のヒーロー的な?」

「どーも
でも、俺は湾ちゃんが好きだな」

小沢のぼそりといった一言の意味がわからなかったのか
松村先生がきょとんとした顔で首をかしげる
そして、はっとしたように
俺の方を向いてジーッと睨む

「ふみちゃんさぁ……演劇全然だめだね
もう棒読み!!
やる気ある?」

「ないですね」

即答だ。
こんなにはやく返事したのは最高記録じゃないだろうか?
全くなにが両立するだ
演劇しかやってない
しかも、部活じゃないのだから
ただのお遊びでしかないだろう
小沢の影響があってか
松村先生は俺のことを「ふみちゃん」と呼ぶようになった
別に気にしてはないのだが

「君の才能はこんなんじゃないはずだ!!
 だって屋上のとき・・」

「・・アレは素ですから」

「まぁまぁ先生、ふみちゃん大根だからww
 屋上はまぐれですよ!!」

「大根って御醤油つけてさかなとたべるあれ?」

「ええ!!あ、でもふみちゃんはピンク色の大根っす!!」

「そうなのかぁ」

小沢も小沢で頭がおかしいが
納得する松村先生おかしいと思う
ごーんと小沢の家の時計がなる

「じゃあ、今日はこれで終わりっ
小沢君、部屋かしてくれてありがとう」

松村先生はぶんぶんと手をふって帰っていった
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