Love Water―大人の味―
これではお礼の意味がなくなってしまった。
また何か考えなきゃ、と思いながらも、素直に「いたたぎます」と手を合わせてフォークに手を伸ばす自分がいる。
「ほら」
差し出された銀の獲物をもらうと、部長が微かに笑った気がした。
たぶん、気がしただけ。
ケーキにフォークをさして食べると、顔がみるみるうちに緩み出した。
「美味しい!」
思わず部長に向かって言ってしまった。
でも、久しぶりに食べた駅前のケーキはやっぱりとても美味しくて。
部長も一口食べて見て、頷いて言った。
「うまいな」
その言葉が自分が褒められたみたいに嬉しくて。
「でしょう!駅前のケーキ屋さんはあたしの大好きなお店なんです!
ケーキにはひとつずつ名前があるんですよ」
「名前?」
「はい!」
美味しさと嬉しさが入り混じって、若干敬語が抜けてしまったけど、部長は得に気にした様子もなく問いかける。