Love Water―大人の味―




説明を聞いていた部長は、ふと視線をあたしの皿に向けるとそれを指差して言った。



「これは?」



「え?」



一通り全部説明し終わったと思っていたあたしは、まだあったっけと首を傾げ彼が指差したケーキを見た。



「あ………」



皿の片隅に、シンプルにさりげなくあるそれ。



ハートの形をした手の平サイズのそれは、あのピーチタルトだった。



「これは………」



そう言ったきり、言葉が出ない。



新作だと店員が言ったタルトに、なぜか胸がギュッとなった。



どうしてなのかは分からない。



ただ、そんなあたしの変化に気づいたのか、部長は自分のケーキに視線を戻した。



「忘れたなら、別にいいが」



「…………」



そっけない言葉。



あたしは動かない。



そして、フラッシュバック。




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