Love Water―大人の味―
そんな時に、このタイミングで。
思い浮かんだのは、彼の顔。
たった24時間前なのだ、あたしが彼にフラれたのは。
そう、1日しか経ってない。
そう考えると、急に心がすうっと冷えていった。
あたしはここで、何をしているのだろう。
目の前に座るのは会社の上司。
視線を下げれば、色とりどりのたくさんのケーキ。
……ここは、男の部屋。
「………っ」
気づいてしまったときには、もう遅い。
「どうした?」
動きをなくしたあたしに、不審に思ったのか部長が声をかけてくれる。
だけどその声を聞いた瞬間、身体はバネのように動き出した。
「か、帰ります」
「え…?」
立ち上がって、頭を下げる。
「ごちそうさまでした。美味しかったです」
まだ残っているケーキを横目に、彼にお礼を言う。
そして、玄関に向かってリビングを出る。