苦い舌と甘い指先

冬休み








「なぁなぁー。あの時みたいに化粧しねぇの?」



「うるっせぇな!!毎日の様に言ってくるんじゃねぇ!!」



あのカラオケの日から早一週間。


目が大きくなったあたしが部屋に戻ると、ミツは

『…誰だーーーー!!』


と大げさに驚いてマイクをハウらせていた。


かと思えば今度は『なぁなぁ。何で急に化粧なんかしちゃったわけ?可愛いんですけど』とか何とか、顔を真っ赤にさせて妙な事を口走る。



まぁ誉められて悪い気はしねぇが、ミツの言い方は何か、キモかった。


その上次の日からも、今日の様な調子で『化粧化粧』と騒ぐので二度としてやらないと心に決めた。



「なぁなぁー、化粧…」


「…あんまりしつこいと、お前の大事なモン、蹴り上げるぞ」


「そういえば今日は終業式ですね」



話しの切り替えがへったくそで笑った。




教室に着くと、クラスの大半を占める男共は冬休みに浮かれていた。目に見えて。



「ジュノちゃーん!ミツぅ!おはよ~!!」


「夏輝。…なんだこの騒ぎは」


「あー。なんか今日皆で遊びに行くらしいよー。他校の女の子も一緒に」


「だからか。皆小躍りしてるのは」


今日がクリスマスイブだと言う事もテンションを上げる要因になっているのだろう。


なんか平和すぎて笑えてくる。




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