苦い舌と甘い指先




手の上の小さな小箱には、可愛らしい赤いリボンと、金のチャームの様なものが飾られていて


「かわいー…」


このあたしが思わず声に出してしまった程。


聞かれてやしないかと顔を上げると、もうそこには肥後の姿は無く


慌てて振り向いたそのずっと先で、彼が優しくこちらを見ていた。



信号が変わり、沢山の車が往来する。道路の向こう側に居る彼はまだ、動かない。






「愛してる」






笑った口元が、そう動いた様に見えたあたしは、きっと恋の末期だ。
















< 116 / 136 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop