苦い舌と甘い指先
手の上の小さな小箱には、可愛らしい赤いリボンと、金のチャームの様なものが飾られていて
「かわいー…」
このあたしが思わず声に出してしまった程。
聞かれてやしないかと顔を上げると、もうそこには肥後の姿は無く
慌てて振り向いたそのずっと先で、彼が優しくこちらを見ていた。
信号が変わり、沢山の車が往来する。道路の向こう側に居る彼はまだ、動かない。
「愛してる」
笑った口元が、そう動いた様に見えたあたしは、きっと恋の末期だ。