苦い舌と甘い指先
パーティーの後に
「……歩くの早くない?」
「…もう二人とも待ってんだろ。お前もちょっとは焦れ」
「はいはい」
背中の向こうでクスリと笑う声が聞こえて、益々歩みを早くする。
…何やってんだ、あたしは。
置いて行かれた道路の向こう側の肥後が、あんな事言う筈ねぇのに
勝手に妄想して勝手に恥ずかしがって、待っててくれた肥後を置いてさっさと駅に向かうとか
人間としてかなり終わってるよな、自分。
笑顔を向けるとまでは行かなくても、もう少し愛想良く出来ないもんか。
一人悶々と考えながら必死で足を動かす。
ふと顔を上げた所に、夏樹とミツが立っていて。
「おーー…むぐっ」
声をかけようとしたと同時に、口をふさがれた。こんな事をするのは勿論ヤツしか居ない。
「しィ……。…見て」
「あ?」
口元の大きな手のひらを外しながら、彼女たちを見る、と。
「んな…っ!!」
ち…っちちちちちちゅーーーしてる…!!!
「な…コレっアレっ…!!おまっ……えっ!?」
あわあわと肥後と奴らを交互に見やると、肥後は冷静に
「…うーん。俺、浮気されてる?」
なんて、うすら笑いを浮かべながら二人を見ていて。
「…お前、出てかなくて良いの?」
なんか普段は使わない気なんかつかっちまった。