苦い舌と甘い指先
だけど。
「…うーん。どうなんだろうね。立場的には出てった方が今後面白い展開になる気もするけど……でも、あれってさ、“どっかにゴミが”パターンじゃない?」
とか何とか、訳のわからねぇ事をブツブツ唱えてやがったから
「お前が行かないならあたしが行ってやる」
肥後は『は?』トカ言ってたが、全然関係ねぇ筈のあたしが汚れ役に徹してやる事にした。
男ならどしっと構えて喧嘩の一つや二つ位かまして欲しいもんだ。
やれやれと腰をあげて。
「お前らぁああああ!!歯ァ食い縛れ馬鹿野郎!!」
怒声と共に走りだす。
二人はぎょっとした顔でこちらを振り返り、慌てて互いの身体を引き離していた。……のを空中から見降ろし
「天 誅 !」
「ばっ…ぐふぉえっ!!!」
ミツをピンポイントで狙って、『必☆殺・空中ノ斬』(飛び蹴り)をお見舞いしてやった。
ズシャァッとコンクリ部分に顔を擦りつけながら滑って行くミツ。
「え…えっ!?何!?」
夏輝は何が何だか分からない、と言った様子であわあわとミツとあたしを交互に見やっていた。
「お前…肥後とミツ、どっちが好きなんだよ」
「え…?」
「惚けんなよ。今肥後には言えない様な事、してただろ?」
「ジュノちゃ…」
核心に迫るも、夏樹は未だに状況が飲みこめない様な素振りを見せて来て、あたしのイライラは限界を迎えていた。
「選べよ!!選ばせんじゃなくて
ちゃんと自分で決めろ!!
あたしのおこぼれみてぇなモンで満足してんじゃねぇよ!!!
好きなら一番を決めろ!決めれねぇなら諦めろよ!!
アイツと付き合ってんのに堂々とミツとキスなんかすんじゃねぇ!!!」
自分が肥後とキスをした事はすっかり頭から抜け落ちて。馬鹿だあたし。