苦い舌と甘い指先
途端に教室がざわめいた。
男共はコイツを神を崇める様な眼で見つめているし
女共は“あああ”、と地面に泣き崩れる。
何だ、何だよマジでさ!
助けを求めてミツを見たのだが、ミツは怒った様な口調であたしを睨みつける。
「…おい、お前肥後先輩と仲良いの?」
「はぁ!?しらねぇし。昨日会ったばっかりの、あたしのイヤホンを汚物にしたヤツとなんて仲良くなりたくねぇ!」
「……良く分かんねぇけど、それなら良い」
良くねぇ!さっさとこの状況を何とかしろ!
ミツを睨みつけながらジェスチャーで必死に助けろと言ってみたのだが
「え?何?ゴリラの真似?似てる似てる」
とか何とか言って腹を抱えて笑い出しやがった。
何故今このタイミングでゴリラの真似なぞしなければならんのだ。
額に血管が浮き出して来るのを感じていると、クスクスと肥後が笑いだす。
「あれ?もしかして彼氏?へぇ…こういうのがジュノちゃんの好みなんだ…?」
「…何言ってんだ、変態。用が無いなら早く帰れ。ハウス!!」
「へぇえええ。ふぅぅうううん」
あたしをシカトして、まじまじとミツを眺め出す。
何がしたいんだ、変態のくせに。
「な…何すか?」
えへらっ と笑うミツを、『良いから良いから』と言って、細部まで眺めたおす。
暫し経った後に、とんでもないナルシスト発言をする肥後。
「でもさ、俺の方が美人だよね」