ヌードなアタシ
『おなかが減るのは元気のしるし。
嫌なこと吐き出すと楽になるでしょ…
ところで、面接の感触は?』


『うん、ちゃんと出来た。
激動のさなか
一晩中、目を冷やして頑張ったもん。
受かりたいな…』


『そうよねぇ…よりによって前日だもの』


2人で笑う。


『他のモデルさん、みんな年上だったよ。
私だけ子供っぽくて浮いてた気がする。
長澤さんや社長さんは
期待してくれてるから…
何だか申し訳ないな、あまり自信ないの』


『そんなの受かればラッキーくらいに思って臨めばいいのよ。
先方の戦略と好みと
利害関係で決まるんだから。

上手く合致したモデルに仕事が入るの。
それだけ。
だから合致する仕事に出会うまで
受け続ければいいことだもの
気にしない、気にしない』


『うん…でもね、
心もボロボロ、仕事もボロボロじゃ…
惨めすぎるよ』


お碗を片手に、お餅をふうふうと啜りながら言う。


『私を見てみなさいよ。
女が30年も生きていれば
キズのひとつやふたつ…
あ、みっつやよっつかな…あって当然なの。

でもね、失敗した事や傷ついた事くらいで
人の価値は変わらない。
何があっても
自分を見捨てないで生きてきた事実こそ
今の私の証なのよ』


自信たっぷりに微笑むケイちゃんは
大介さんがよく言うように

やっぱり男らしくかっこいいと思う。


『おかわりする!』


アタシはお椀を持って立ち上がった。

ケイちゃんは優しく笑っていた。
< 222 / 346 >

この作品をシェア

pagetop