史上最強お姫様の後宮ライフ覚書



しかし、リスティーヌが角を曲がろうとした瞬間、突然、視界が真っ暗になった。


同時に頭上から聞こえたのは若い男の驚くような声。


「(……やばっ。)」


すぐにリスティーヌは自分が誰かに衝突してしまったことに気づき、急いで距離を取ろうと顔を上げた。


「あ、ごめんなさ…」


が。謝罪の言葉は途中で止まる。


「あれ?君は…」


未だ腕の中にいるリスティーヌを見て驚くのは黒い瞳。


そして、その触り心地が良さそうな黒い髪は風に優しく靡いていた。


「……確か、新しい正妃候補付き侍女の一人だったかな?」


正確には侍女ではなく本人なのだが、否定するわけにもいかずリスティーヌは苦笑いをする。


というか、何故この男が真っ昼間から護衛も着けずにこんなところを出歩いているのかリスティーヌには理解出来なかった。



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