屍の孤島
秀一は耳を疑う。

だが。

「こ、こんな井戸…私一人でっ…いぎっ!…ササッと脱出してみせるわよっ…だからあんたはっ…先に行きなさいっ…あんたなんかいたらっ…あうっ!…足手纏いになりかねないわっ…」

そう言ってのける梨紅。

…それは、彼女が見せた精一杯の『嘘』。

秀一に心配をかけない為、彼を騙そうとする最期の演技だった。

勿論、そんな演技を見破れない秀一ではない。

あの苦悶の声を聞いて、そんな言葉を信用できる筈もない。

しかし、それをわかった上で。

「あ、ああっ!そうかよっ!」

秀一は井戸に背を向けた。

その声は涙混じりになっている。

「じ、じゃあ先に行くぜ!さっさと追いついて来いよな」

「いっ…言われなくても…あぐぅっ!…そうするわよっ」

私の拙い嘘に、付き合ってくれるのね…。

案外いい奴だったのね、アンタ…有り難う、感謝するわ…。

遠ざかっていく秀一の足音。

それを聞きながら。

「生き残れるといいわね…」

遂に意識を失い、梨紅の体は井戸の底へと沈んでいった…。

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