屍の孤島
飛び散る鮮血。

頭の中身がドロリと零れ落ち、凄惨な光景が足元に広がる。

「きゃああぁあっ!」

無我夢中、混乱の最中とはいえ、自らがやった事なのに悲鳴を上げる梨紅。

だがゾンビは始末する事ができた。

好都合には違いない。

「ほら、急ぐぞ!」

梨紅を半ば引き摺るようにして、秀一は先行する鏑木、そして小野寺達の後を追った。

ゾンビを一体始末したからといって全く安堵はできない。

既に次なるゾンビの集団が、港に押し寄せてきているのだ。

「早くこっちへ!」

先行していた小野寺が叫んでいるのが見えた。

フェリーターミナル…といっても小さな建物だが…その中に逃げ込んでいる。

成程。

秀一は小野寺の機転に感心した。

あの建物なら電話もあるだろう。

一旦建物に逃げ込んで安全を確保した後、電話で助けを求めるつもりらしい。

そうとなれば。

いまだ混乱して泣きじゃくる梨紅を引っ張って、秀一は建物まで全力疾走した。

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