屍の孤島
幸いゾンビ達の動きは緩慢だ。

秀一達が走れば、もう彼らの足では追いつく事ができない。

一気に距離を離して、建物の中に駆け込む。

「よしっ!」

秀一と梨紅が中に入ったのを確認して、小野寺が建物の入り口を閉じ、鍵をかけた。

更に。

「手伝ってくれ」

フェリーターミナル内にあるベンチを幾つも引っ張ってきて入り口のドアの前に立てかけ、バリケードを作る。

ガラス張りのドアだが、こうしておけば時間稼ぎにはなるだろう。

「さて…」

呼吸を乱しながら、小野寺が努めて冷静に呟く。

「何なんですか、この島はっ?」

興奮気味に言ったのは奏。

尤もな意見だ。

上陸と同時にゾンビが殺到してくる。

彼女が見た旅行雑誌には、そんな事が書いてある筈もないし、書いてあればこんな場所には来なかった。

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