屍の孤島
それは、鍵だった。

車のキー。

エンジンのスターターに刺さったままになっている車の鍵が、疲れ切った奏の目に留まったのである。

…混乱の最中、ゾンビから逃げ出した人々の乗っていた車。

当然慌てていたのだろう。

車にキーを刺したまま、ドアロックもかけないまま、我先にと逃げたに違いない。

その結果、車はこの場に放置されてしまったのだ。

ならば…!

奏は反射的に、そばに乗り捨てられていた軽自動車のドアに手をかける。

カチャッと。

軽い音を立ててドアは開いた。

「やった!」

思わず声が出る。

彼女は素早く運転席に乗り込み、ドアにロックをかけた。

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