屍の孤島
梨紅の言葉に、男はゆっくりと振り向く。

表情はない。

怒っている風でも驚いている風でもない。

ただ、その視線だけで。

「……っ」

梨紅は一瞬気圧された。

冷たい、情の一片も感じさせないような眼。

だが口を開かずとも、その男…鏑木 京(かぶらぎきょう)の瞳は雄弁に語っていた。

「な、何よっ…文句でもあるって訳?」

負けじと強気に食って掛かる梨紅。

鏑木の冷徹ともいえる視線を、気丈に睨み返す。

と。

「おい君」

喧嘩腰の梨紅に対して、サラリーマン風の若い男が声をかけた。

中井 秀一(なかいしゅういち)。

仕事の関係で陰島に向かうべく、この連絡船に乗り合わせていた。

「喫煙を注意するのは結構だけど…ちょっと口の利き方がなっちゃいないんじゃないか?」

「はぁ?」

鏑木の次は秀一に。

梨紅はその気の強い眼差しを向けた。

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