幕末純想恋歌
葵は呉服屋のおじさんが着物をくれたことを話した。

「……というわけなんです。でも、よかったんでしょうか…。せっかくの好意だからと受け取りましたか、こんなにしていただくと、なんか申し訳なくて……。」

「いいじゃねえか。くれるって言ってんだ。貰えるもんは貰っとけ。」

「沖田さんにも言われました、それ。でも、わたし、そんな褒めてくれてるような美人じゃないし……。」

「…おい、総司。」

土方が沖田を側に呼んだ。

「なんですか、土方さん。」

「こいつ、ずっとこの調子か?」

ハァと沖田がため息をつく。

「そうなんですよ。無自覚の天然さんなんですよこの子。しかも、上目遣いで袖引いてくるんですよ!」

「……。」

「あ、可愛いとか考えました?ダメですよ、毒牙にかけちゃ。年、いくつ離れてると思ってるんですか。」

「何が毒牙だ!!誰もんなこと考えてねえよ!!」

「え~、怪しいな~。土方さん、タラシだから。」

「ざけんなっ!!余計なこと言うんじゃねぇ!!黙ってろ!!おい、葵。」

も~、図星だからって、と沖田がクスクス笑っているが土方はついに、無視を決め込んだらしい。

< 62 / 131 >

この作品をシェア

pagetop