君の光を想う



「思い出せないだろ?小さい頃何回か柚の家に親父と一緒に行ったんだ。…そん時の俺、すげー太ってた訳」





内心、お前が?と疑う程、ビックリしたけど…


少しずつ少しずつ浮かぶ記憶をアイツと重ねるも似ても似付かない。




「裕福な暮らしの所為か、スゲー太っててさ。周りの奴は社長の息子ってだけでチヤホヤはされたけど、影ではデブだのキモいだの言われてんの知ってたし。でも…」


「………」


「柚だけは、違ったんだ。柚だけは心から優しい笑顔をくれた」




そう言いながら羽井祐馬は窓の外を眺めていた。



その顔は少し緩んでいて、その時の柚の笑顔を思い出してるんだろうか。



「海外にずっと居たんだ、自分を磨く為に。…長かったけど、柚の笑顔を想い浮かべて。でも帰国した時にその笑顔は」



あー…そうか。



「お前に向けられていた、それが無性に腹が立った。だからどうしても手に入れたくなった」



お前も柚の笑顔に惹かれていったんだな。



「ずっと追い求めていたモノが奪われた気持ち…分かるか?全てが崩れていく感じが…」





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