音のない世界
潮風
―今日は中学の入学式だ。
私は
新しい制服を着て、
長い髪を
1つに結わいだ。
「羽菜ーっ」
ライトが点滅した。
部屋に誰か入ってくる合図だ。
勝手に部屋に入られるのは
嫌だから、(とくにお父さん)
設置してくれるよう、
頼んだものだった。
お母さんは
ニコニコしながら
足の先まで私の制服姿を
見回した。
「羽菜!制服似合うわねー!」
お母さんは
手話で話した。
私が
急に耳が聞こえなくなってから
お母さんは
1番に手話を覚えた。
今では
私と普通に会話できる。
"恥ずかしいよ"
私は笑いながら
手話ではなす。