禁断愛 母と悪魔の子
(二)
この匂いは甘い毒だった。
いや、あくまでも例えだが、悪魔の血が流れているキストでも気が抜けば昇天してしまいそうなほど。
悪魔より劣る人間がこの匂いを嗅ぐだけでどうなることか。
「ごめんね」
何故だか悪いと思い始めたキストは、横になる彼女の頭を撫でて言ったが――首を振る。
何を言っているんだか。
こうなることを望み、実行したのは自分じゃないか。
今更、謝ったとこで後戻りなんかできないし、引き返すつもりもない。
「……」
この匂いの効果はまだ薄い。
もっと吸わせる必要性があるだろう。
そう思ったキストは部屋を出て行く。見届けなくとも、密室の空間ならば息をする人間は必ずあの匂いを嗅ぐのは分かりきったこと。