禁断愛 母と悪魔の子
それだけなのに。
「ぎゃっ」
「ぐかっ」
一瞬にして景色が変わったのは何故だったのか。
世界の色が変わる。
ひっくり返ったように。どこか別世界に来たのかと思うほど唐突に。
ぐいと腕が引っ張られる。でも、私もその色に染まって。
「ああ、汚れた……」
キストの声が後ろからした。
「わっ」
「ああっ」
続いては警官隊の声。
引きつった声ばかりなのは、この世界に絶句していたから。
鮮血色。
人間の中身がぶちまけられた世界に私は立っていた。
「――」
歯車が噛み合わないような悲鳴をあげた。
「母さん、母さん。大丈夫だよ」
錯乱する私を後ろから強く抱きすくめる人によって、すぐに悲鳴は呑み込めたが。
「き、キスト。キスト……!」
わけが分からない。
この世界で唯一普通でいたのはキストだけだった。
なぜか。
そんなの決まっている。