黄昏色に、さようなら。
失われた空白の三か月間。
そこに、私があの大事故から傷跡一つ残らない状態で帰ってきた、秘密がある。
何処に居たのか?
誰といたのか?
正直、知りたいと思った。
でも、知るのは怖かった。
なにより、この記憶を辿るためには、事故のことを思い出さなくてはならない。
その作業は、深く抉られた傷をようやく覆ったカサブタを引き剥がすようなものだ。
ほんの薄い膜が剥がれれば、心にパックリと開いた傷口からは、赤い血が噴き出すだろう。
――私が、外食に行こうなんて言い出さなければ、父も母も命を落とすことはなかったのだから。
父と母の未来を奪ったのは、娘である私だ。
その贖罪の気持ちは、どうしてもぬぐえない。
それに、置き去られた記憶の中にあるのが、必ずしも楽しいものとは限らなかった。
知りたくて、知るのが怖くて、
それでも、絶対にその存在を忘れることができない、失われた空白の三か月間。
今、私が見ているのは、まだ一度も見たことが無い『事故後の夢』だった。