黄昏色に、さようなら。
「しかし、この娘は……」
「分かっています。こいつは、『俺の風花』じゃない。そんなことは百も承知です」
俺の風花、じゃない?
意味は分からない。
だけど、
沈痛な、としか言えないような苦しげな純ちゃんの言葉に、心の奥深い所に鈍い痛みが走った。
「それでも、やっぱり風花なんです。イレギュラーでもなんでも、間違いなく風花なんです!」
「加瀬君……」
「博士。もしも今、ここに瀕死の状態で横たわっているのが博士の奥さんでも、葵さんでも、それでもやっぱり見殺しにしますか? できますか!?」
今まで必死で抑えていた感情のタガが弾けてしまったような激しい言葉に、博士は長い溜息を吐き出した。
「痛いところを突くね、君は」
「……」
「そうだね。私が君でもやはり、今の君と同じことをするだろうと思うよ。分かった、薬を投与しよう」
ハッと息を飲むような気配の後、聞こえてきた「ありがとうございます!」という純ちゃんの声がすうっと、遠のいていく。