黄昏色に、さようなら。
「さて、そろそろ、答えを聞かせてはくれませんか?」
私たちの沈黙にさすがに業を煮やしたのか、良子ちゃんは苛立たしげに、声を上げた。
答える代わりに、純ちゃんは、
スッと、自分の右耳に手を伸ばすと、付けられた銀のイヤーカーフ、
実は超能力の発動を抑制する『ESP制御チップ』を、パチンと外して指で弾き飛ばした。
キーンと、硬質な金属音が沈黙を裂き、
「な……んだ?」
ただならぬ前兆を感じ取ったのか、良子ちゃんの異形の瞳に困惑の光が走った、
その刹那。
一陣の荒々しい熱風が、敵に向かって吹きすさんだ。
逆巻く熱い風を纏って、純ちゃんが一歩、又一歩と足を進めていく。
オレンジ色の髪が淡い燐光を放ちながら、風になぶられ、ユラユラと波を打つ。
それは見るものに、何者にも負けない気高き百獣の王、ライオンの姿を彷彿とさせる。
『黄昏の獅子』
あの世界に五人しかいないSA特別国家公務員の肩書を持ち、対ESPテロの国際秘密組織『ガーディアン』の頂点に立つ男の、それが異名。
鋭い光を放つ双眸が、ブラウンから髪と同じ鮮やかなオレンジに変化を遂げる。
空気を震わせるようなエネルギーの放出に、その場に居た誰もが動きを止め、息を飲んだ。
「ま、まさか、この力は……ガーディアンか!?」
その桁違いのパワーに気圧されたように、良子ちゃんは目を見開き数歩後ずさった。
その時、
『風花、行けっ!!』
叫びざま、純ちゃんは地面を蹴った。