黄昏色に、さようなら。
『良子ちゃんの側に!』
ただ一心にそれだけを考えて、瞬間移動《テレポート》する。
視界の端に、グリードの手下を電撃で次々と昏倒させていく純ちゃんの姿が見えた。
あれなら、操られている人間の体には、致命傷にならないだろう。
私の力、ゴッド・ハンドは、相手に直接触れることで、より効果的に発揮される。
良子ちゃんの中に入っているグリードは、憑依体。幽霊みたいなものだ。
でも、やはり、エネルギーの集合体と言う意味では、実態を伴った人間となんら変わりがない。
要は、相手に触れて、『その能力を頂いちゃおう』と言う私の能力を発動させれば、良子ちゃんの中のグリードの憑依能力は無力化されるはず。
そして、私は、良子ちゃんの背後に立つことに成功した。
トン、と後ろに降り立ち、間髪を入れず良子ちゃんを羽交い絞めにして力いっぱい抱きしめ、
出てけ出てけ出てけ、出でいけっ!!
と能力吸収と言うよりは、グリード退散を一心に念じて、一気に力を放出!
「なっ!?」
振り返り、驚愕に見開かれた異形の瞳が、徐々に色をなくしていく。
「ばか……な。データと違……」
三年前、力が覚醒する前の私だったら、きっと逃げ出していた。
自分のために誰かが傷つくらいなら、自分が犠牲になればいい。
そんな自己憐憫に酔って、立ち向かうことなどしなかった。
だけど、あの時の私とは違う。
失ったものと、得たもの。
その両方が、今の私を強くしてくれている。
「データが古かったみたいだね。人間は、日々、成長ってものをするんだよ」
「く……そっ、こんな……ところで――」
その呟きを最後に、ガクンと良子ちゃんの体が崩れ落ちるのを、必死に抱き留め……。
「あ? あわわわっ!」
ようとした私は、良子ちゃん諸共、ものの見事に後ろにすっころんでしまった。