ラブトラップ
「人の店先で、延々と立ち話されたら気になるだろうが」

だって、美虎の喫茶店はまだここから歩いて5分のところにあるって――


「ちょ――っ。
 健二、嘘吐いたわね?」

睨む私から、それまで壁になっていてくれた健二がゆっくりと離れていく。

「嘘だなんて、人聞きの悪い。
 そういうのがトラップって言うんだよ、キリン。
 誰かを罠にかけたいなら、このくらい慎重かつ大胆にやらなきゃ。
 じゃ」


――と。
言うことだけ言い終えた健二は、大草原を走るチーターのように駆け出して、あっという間に見えなくなってしまった。

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