ラブトラップ
くるりと踵を返し、そこから逃げ出そうとした私の腕を素早く掴んだのは美虎だった。

「あててやろうか?キリンは俺のことが――」

低い声が、真後ろから挑発的に響く。

「わぁああああっ」

私は慌てて手を振りほどいて、美虎を見据える。


――分かっていて、からかってるんだったら、本当に最低。

それなのに、睨みつける私を見て、美虎は急に相好を崩す。
柔らかい笑みが、ふわりと私の緊張を溶かしていく。



ああ、ヤダヤダヤダ。
なんで、私こんな男に惚れちゃったんだろう。

口は悪いし、意地悪だし。
ちょっと歌は上手いけど、だからって世界一かっこいいってわけでもないのに。


今だってただ。
こうやって近くで、視線が絡んでいるだけで、心臓がきゅんきゅん高鳴って、身体の芯が熱くなってくる。

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