ラブトラップ
「好きなら好きって言えばいいのに」

いつか耳にした、大好きなあの柔らかい声が唐突に彼の唇から紡がれる。

ダメダメダメ、このペースに巻き込まれちゃダメ。
だいたい、これが正しい告白の仕方だとは、とうてい思えない。


私、罠に引っ掛けられた無様な獣みたいに、ただ、もがいているだけじゃない。

「――だ、誰が?
 いい?
 私は未だに恋なんてしたことがないの。
 だから、アンタを見てドキドキするのも、眩暈がするのも、もしかしたらちょっとした気のせいかもしれないじゃない?
 だからね、もうちょっと冷静になれるまで待ってよ」


いつもの口調でぶっきらぼうにしか喋れない私を見て、一瞬呆気に取られていた美虎だが、次の瞬間その口許を緩ませて、それはそれは極上の笑みを浮かべてみせた。

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