【短編】君に捧げる『物語』
「ねえ、塚本はもっと笑った方が良いよ」
「なんで?」
「………駄目。やっぱ笑わないで」
「は?」
自分のことながら何意味不明なこと言ってんだろう。
どっちだよ、ってね。
今のが案外ツボだったのか、今度は口を手で覆いながら笑い出した。
瞳もうっすら潤んでいるように見える。
多分これが彼女の最大級の爆笑だろう。
……理由はあるんだ。
他の奴らに、彼女の笑った所なんて見て欲しくなかった。
きっとこんな彼女を知っているのは僕だけだから。
その笑顔も、僕だけの特別にしておきたいんだ。