【短編】君に捧げる『物語』
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「―――前にさ、教えたよね、私がこの仕事をしている理由」
「うん」
『今お世話になっている親戚の家を出るためにお金貯めてるんだよね、私』
過去に本人から聞いた【仕事】の理由。
それでも辻褄が合わないところが幾つかある。
もう既に一人暮らしをする分は稼いであるだろう。
寧ろ余りが出るぐらいだと思う。
だけどそれ以上は聞けなかった。
彼女から話してくれるまで待とうと思った。
「もうだいぶ貯まったから、家を出ようと思うんだ」
塚本の髪が風になびいて顔に被さり、こちらからはその表情がよく見えない。