【短編】君に捧げる『物語』



「………やっぱりここにいた」


屋上へと繋がる錆び付いた扉を開けると、遠くの方に座っている女の子の姿が見えた。


「…また来たの?」


嫌みの籠もっていない、寧ろ感情すら籠もっていない、抑揚のない返事を返される。


周りには、誰もいない。


そりゃそうだ。
だってここは立ち入り禁止の場所。

彼女が秘密裏に合い鍵を作ったのだ。


「寒くない?もう冬だよ」

「別に」


< 5 / 26 >

この作品をシェア

pagetop