【短編】君に捧げる『物語』
確かに雲の隙間からのぞく空は真っ青だが、それでもやはり冬の冷たい風が吹いている。
そんな空を体育座りで眺めている彼女のもとへと近づき、隣に腰を下ろした。
「今日は何の用?」
「特に何も。ただ何となく」
「…君はいっつもそれだね」
そう、ほんとに何となく。
僕も空を眺めてみたけど、特に面白くもなかったから昼飯のメロンパンの袋を破いた。
「…そういえば、また賞を取ったんだってね。えっと…、大臣なんちゃら賞?おめでとう」
「…あぁ、これのこと?」
塚本はそう言うと、横にくしゃくしゃに丸められていた上質の紙を、元通りに開いて見せた。
そして徐(おもむろ)に立ち上がり、落下防止用のフェンスに指を絡める。