Monochrome Hands[BL]
「……怒鳴ったりして悪かったよ」


こんな重々しい空気の中で、流石にずっと怒っていられるオレでもない。

ここは謝っておこう。声の出ない原因は生活を共にしているリクでも分からないらしい。

出会った時には既にイツキは声を失っていて、リクですら声を聞いた事がないそうだ。


「イツキ、さっきの質問答えてあげて? さっきは彼が怖くて答えを書けなかったんだろう?」


リクはイツキに優しくそう促し、イツキはそれに従い何かを紙に書きだし、

オレに渡すとすぐにいなくなった。曇ったままの表情を変えることなく。


『ごめん。でも、ボクは君を殺すなんて出来ない。
助けるのに理由は必要なの? 必要なら、考えておくよ』


と。一つ溜息を吐くと、リクは話題を変えるかのようにオレにある質問をした。

まるでイツキがいなくなったのが好都合だと言わんばかりに。


「僕がイツキの事を君の命の恩人と言ったのは、イツキが君を此処に連れてきたからだけじゃない」

「は? 何を唐突に」

「君は信じられないかもしれないが、イツキは君を食べたんだ」


食べたってまさか……おい、まさかそう言う事なのか!? だとしたら屈辱じゃねえか。
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