Monochrome Hands[BL]
「……ああ、誤解をさせるような言い方をしてしまったね。すまない。
イツキは君の“傷”を食べたんだ」


オレが顔を真っ赤にしている事に気付き、

リクはすぐに言葉を訂正したがそれでも信じる事は出来ない。……傷を、食べた?


「君はあの時ボロボロ。僕から見ても、瀕死だった事は分かった。
その割には、身体が軽いとは思わないのかい?」


……! 言われてみれば確かに。軽いような気がする。

痛みもそんなにないし。それでも三日は大人しくしていないといけないとは思うが。


「イツキはね。どういう訳か、普通の食事以外にも、毎日他人の傷を食べないと生きていけない体質なんだよ。
とは言っても、本当に転んで出来た擦り傷とか、
縫い針で刺して出来てしまった小さな傷だけで充分らしいけれど、
さすがにこんな街じゃ人もいないし、僕だって毎日怪我なんて出来ない。
それに食べすぎれば命にも関わる」

「それって、アイツがオレの傷を請け負ったって事かよ?」

「ちょっと違うよ。イツキにとって傷は食べ物。自分に移した他人の傷を、
自身の身体で治す訳ではない。ただ、食べすぎれば毒になる。それだけだよ。あの時だって……」


そこまで言いかけた時、イツキは再び姿を現した。皿に盛ったパンとスープを持って。
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