時雨の奏でるレクイエム
歪みの向こうに見慣れた(けれど少し違う)姿が見えた。
歪みが消え去るとそこにクルーエルが現れた。

「な、あ……か、か……」

クルーエルは自分を見て口をぱくぱくとさせている。
かすかに頬が染まっているように見えるが……。

「可愛い!ラディウスっ」

「何!?」

クルーエルはラディウスに抱きつくようにすると、にゅっと両手がラディウスの頭に伸ばした。
そして、はしっと『耳』を掴む。

「獣耳だよ、わあ尻尾もある!え?ラディウスなんなの?どんな獣なの?」

ラディウスは自分の頬が熱を持つのを感じた。
クルーエルの袖についた装飾があたる。冷たい。

「う、わぁぁぁぁ!!触るな!見るなっやめろクルーエル!」

珍しく取り乱すとラディウスは強引にクルーエルを引き離した。
クルーエルは一瞬寂しそうに、そして名残惜しそうにあっ……と呟くとしょんぼりして俯いた。

「ごめん、ラディウス。つい……」

バツが悪くなってラディウスは顔を背けると遠くに街のようなものを見つけた。

「クルーエル……迎えが来たようだ」

「え?」

クルーエルがラディウスと同じ方向を見る。
一匹の美しい栗毛色の馬がこっちに向かって走ってくる。
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