時雨の奏でるレクイエム
「……あっつ」

結界である家から出ると、今まで忘れていた熱気を感じた。
しかし、すぐに涼しい風がラディウスの背中をなでる。
振り返ると、結界の家が風を起こしながら解けていた。
術者がいなくなって勝手に解けたのだろう。
クルーエルはそれを見てびっくりしていた。


それにしても、熱気がひどい。
外套に身を包んでいるラディウスは暑さだけを我慢すればいいが、クルーエルのワンピースではすぐに肌が焼けてしまうだろう。

「とにかく、街を出よう。……どこかで、クルーエルの服を買わないと」

「……あっ」

クルーエルはやっと自分の今の格好に気づいたのか、顔を赤く染めた。
今気づいたが、クルーエルの顔色がよくなっている。
けっこう、白かった。
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