時雨の奏でるレクイエム
その言葉にラディウスは意表をつかれた。
だけど、一番驚いているのは、彼女自身だ。
瞳に驚愕の色がにじんでいる。

「あ、あれ?なんでそう思ったのかな。ううん……私は人間だよ。私は人間……」

しかし、ラディウスはどこか心の奥でそれを理解していた。
この少女と行動を共にすれば、こんな世界でも生きていけるだろう。
そんな気がした。
疑えないくらいという、少女の言葉、その通りに。

「俺は、ラディウス。名前は?」

少女ははっとしてラディウスに向きなおす。

「クルーエル。クルーエル・ファスティアナ」

全身に歓喜の波が押し寄せる。
それは、自分自身の感情であると共に、自分自身に宿る、幻獣の感情でもあった。
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