時雨の奏でるレクイエム
「アルミナ」

シルメリアはアルミナの名を呼んで真顔になる。

「はい」

アルミナは緊張したように身を強張らせて返事をした。

「幻魔の一族は力をほとんど失いました。より多くの幻獣の血を求めて近親相姦も始まるでしょう。だから、私は還る前に幻魔の一族の力を全て消そうと思っています」

「……はい」

「しかし。幻魔の一族の中には、貴女のように幻獣と共存し、幻獣と同じ感情を持つ、フラクタルな子供達も存在します」

「フラクタル?」

「自己相似のことだ。つまり、大きさは違えど表す形は同じって事なんだろうと思う」

「そこで、幻獣達は貴女に祝福を授けました。その力を使って、人と幻獣の橋渡しとしての役割を果たして頂きたいのです」

「拝命、いたします」

「フラクタルな子供達と協力してこの世界と幻獣の絆を、より強固な物にしてください。そして、闇の幻獣王ウラドの力を抑えてほしいのです」

「均衡が崩れれば、フェアルーンは崩壊する……」

クルーエルは呟き、身を震わせた。
生きるために光の幻獣王を探しにいく、というのと闇の幻獣王。
この二つには関係があるのだろうか。

「クルーエル、ラディウス」

シルメリアは二人を呼びかけると、胸に手を当て顔を伏せた。

「今日のことで、二人が幻獣王と会うための条件は整いました。幻獣界でお待ちしておりますわ……」

シルメリアは微笑むと、水晶の輝きと共に還っていった。
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