教室バロック
スミスが見つからない事に焦れ
結局時代は、
本と同じに流れて行く ――
時代考証もしっかりした
ギリシャ悲劇の舞台っぽい
セリフも多い、硬派な感じの台本で
結構おもしろい
だけど真田はそれを
オレに見せてから
『 やっぱり、これ、やろう 』と
今演じられている台本を出して来た
「 真木 」
オレは
一旦暗転した舞台の上へ
袖の暗幕をめくって昇った
座ったのは飯屋の椅子
ライトが照らされ
ヘトヘトになった新撰組たちが
そのすぐ横に通り掛かる
『 …あれ? 土方さん
あの人が食べてるのって
とろろ飯ですよね…
近藤さん大好きだし、見掛けてないか
聞いてみませんか? 』
『 うむ
――― っておい!!
あれは坂本、坂本龍馬だ!!! 』
『 えええええ?! 』
実は坂本の方はわかっていて
通り過ぎるのを待っていた
しかし気付かれたとわかると
持っていた茶碗を放り出し、
ダッシュをかまして逃げて行く
斎藤は刀を抜き
皆も怒涛の勢いで、後を追おうとする が
『 土方さん!!
と…トロロで滑って追えません!!! 』
『 バカモノ〜〜〜!!
追え! 追うんだ〜〜!! 』
"ああああ"と
全員コケたまま、再び舞台は
皆の爆笑の中、暗転して行く
――― そして
数分に渡る
新撰組達の大乱闘シーンの映像が
暗闇の中の白い布に、映し出される
『 土方〜〜!!
土方の姿を見た者はいるかああ!! 』
『 かかって来いやあああ!!
俺の槍にかなうものならなあ!! 』
スピーカーから流れる
録音されていた、隊員達の怒声と
乱戦の音
それはプツリと、数分で消え
スポットライトに照らされ
イブニングを着て正装した西郷隆盛が、
代わりにその場へ現れた
どこからか女性の声
『 随分、お早いのですね 今朝は 』