教室バロック




だいぶ様子も落ち着いて

だけど


最近入って来た看護士さんが
夜の食事を持って来てくれたスキを狙い
ポケットに入っていた鍵を奪った




真っ先に向かったのは

家でも、学校でも無い ―――







トンネルを抜け、電車が少し揺れて
桜井が橘につかまる




空いた車内ではあったけど
極力小声で、那智が話始めた


「 …佐野の話によれば

その夜、ある場所で
ちょっとした騒ぎがあったんだと


見てたのは、佐野の知り合いっていうか
まあ、携帯しか知らない間柄っていうか
…遊び友達連中? 」



「 ――― おう 」



「 …んで

よく、…が立ってんだよ そこ…


… 最初は、なんかちっこいオカッパが
ウロウロしてんなあって
皆で道に座りながら、
なんとなく見てたらしいんだけど

…… で 」




那智が話あぐねているのが解ると
橘が桜井の、耳を塞ぐ


桜井は不思議そうな顔もせず
黙ってそれに従い、視線は窓の外

夕暮れ色の 銀座のビル群






「 …いい加減、挙動がおかしいから

ある車が入って来た時
そこにダッシュして行ったらしくて
それで、
なるほどって思ったらしいんだけど


… 伊藤もちろん、金持ってないじゃん

兄ちゃん 追い払ってたらしいんだけど

それでちょっと…騒ぎになって

…騒いでたのは
伊藤…だけなんだけどさ 」


「  うん  」



「 かなり人が、遠巻きではあるけど
集まってきちまって


―― 車の中に、
連れ込まれそうになったんだと

んで…
ヤベエんじゃね?ってザワザワしてたら

" ルウ "が来たんだ 」











< 231 / 287 >

この作品をシェア

pagetop