教室バロック





「 …四国の方の銘菓か? 」


「 えっ
でもでも!!

前は、雲まる。とかいうマカロンも
山ほど持って来てくれた事あるよ?! 」


再び山瀬が検索


「 …出てこないな
かなりマイナーなのか? 」



橘が桜井の手を繋ぎながら
ぽつりと呟く


「 親戚から送られて来たって
予想もあるけど

でもあいつんち、和菓子屋だよ?

各地の美味い菓子は、取り寄せて
研究とかするんだと思うから
あまりあてにならないかもしれない… 」



デカい洋菓子屋の息子、橘の意見に
那智、比奈、桜井が
『 …あああ そっか… 』と
しゃがみ込んでしまった





構内アナウンスが、壁に反射し残響する




「 …とにかく
今、新幹線の発着予定見たら
阿尾森行きも、博多行きも
後、十分くらいで…

二手に別れて、上、あがらないか 」


携帯を懐にしまった那智の言葉に
全員立ち上がる


「 わかった!! 山瀬!!
俺らこっち行こう! 空哉と橘は 」



橘は頷き、
すでに逆側へと走り出している
桜井と比奈の後を追った



雑踏の中


オレだけ
そのどっちにも走らずに

さっきの比奈たちじゃないけど

自分とミツコの記憶の中に
何か少しでも
行き先に関わる様なカケラがないか
必死に思い起こそうとしていた






―― 東京駅から出ているのは

新幹線 だけじゃないから








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