教室バロック






やわらかく

微笑みながら、


ルウはエスカレーターの上から
細く白い右手の指で、左の方向をさす






―― 天井を見上げ
案内プレートをみると


『 ありすちゃん 』にも、早々に
アイデアとして使われた
ネオ豪華寝台列車『 はるか 』の発着口


停車駅が少なく、個室があって
ゆっくり景色を楽しみながら、
ストレスなく移動出来るのがウリ

そこをギゼルに襲われて
ありすちゃんは激昂し、変身する ――









エスカレーターを駆け登り
辺りを必死に見回した


真新しい改札エリアは
どこかの新聞社が提供しているらしき
小さな写真展のようなブース


足付きのホワイトボードに
引き伸ばされた日本の四季が
パネルになって飾られている



それを、待ち時間の楽しみに
少し距離を置き眺める乗客たち


四角く黒光りした、低いソファ


観葉植物の影に腰を降ろす
やさしそうな、中年夫婦


その口は一生懸命
真ん中に座る少女に、話しかけていて






―― 少女は、それに薄く笑いながら

目の前の紅葉に、ジッと見入っていた










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