教室バロック
「 ―― よう 」
コン と
そのオカッパ頭を、指で叩くと
かなりハッキリした顔で
ミツコは後ろを振り向き
次には何事かと
両脇のご両親が振り返る
頭を下げて 挨拶した
――― 少しして
乗り込むギリギリまで
待ってもらった甲斐があって
比奈も、桜井も、那智、山瀬、橘
全員ミツコと、少し話す事が出来た
走りまくって来たオレたち全員は
もう見るからにムザンな着崩れ方で
『 なにやってきたの 』と
ミツコに、鼻で笑われる有様だ
「 …ちょっとそっち行きなさいよ 」
ボードの裏で、男連中は順番に
あっさり帯を解かれてしまって
那智は手際の良さに驚き
山瀬は自分でも、
前に回した帯を整えながら
ミツコの支度に身を任せる
「 すっげー…
伊藤、
こんなに着付け上手いなんて知らなかった
―― おい、比奈村、桜井!
真木や橘のも手伝ってやれよ!」
すると二人は、首と片手をブンブン振る
「 できません。
うち着物とあんまり縁ないから 」
「 なっ! …比奈村よお
じゃあ桜井!
お前 田舎、京都だよな?! 」
「 そ〜ゆ〜のは、あまり関係ないと思う。
それにミツコちゃん
着付けのお免状持ってるから
任せた方が、絶対いいと思う 」
「 ね 」
「 ね〜 」
変な息の揃い方で、
ニコニコ笑いながら
比奈と桜井が首を傾げ合う
そしてミツコがソファに戻ると
両脇から思い切りくっついて
遠慮ナシの泣き声を、思い切りあげた