gently〜時間をおいかけて〜
あたしは、どうすればいいかわからなかった。

せっかく作った家庭は冷えたものになっていたうえに、あたしは離婚の準備を進めている。

夫婦仲が冷え切った様子を見た航は、心の底から傷ついていた。

「――ごめん…」

あんなにも悩んだくせに、この言葉しか思い浮かばなかった自分を恨んだ。

こんな言葉で、簡単に済まされるような問題じゃない。

わかっているのに、他には何にも言えなかった。

「だから、俺は決心したんだ。

あんたと父親との仲を阻止すれば、過去を変えれば、何とかなるんじゃないかって」

そう言った航の長いまつ毛を伏せているのは、悲しさからなのだろうか。
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